top of page

経済かコロナ感染防止対策か

  • 執筆者の写真: shinichiro honma
    shinichiro honma
  • 2020年8月17日
  • 読了時間: 4分

更新日:2020年8月25日

コロナ感染防止対策と、経済。様々な立場の方々が、様々な意見を発信する。

私には、よくわからない。言えるのは、死にたくない。感染者になりたくない。インフルエンザよりも死者が少ないなどの意見もあるが、特効薬もない状況下での感染の帰結を事故死と同列(事故死者数のほうがはるかに多い)に扱われても、若者でもない限り、安心にはつながらない。そのような心情の中、堂々巡り的な議論にうんざりだ。

政治とは何だろう。出所を失念したが、早期に問題解決する政治家は人気を得られないらしい。問題が露見したのちに対処し解決する政治家が優秀であり、人気を得る。解決できなければ…。政治はこの国難に機能しているだろうか。しかし、何が正しいかはわからない。何が正しかったかという事後検証は可能だが。

人は、不安や怖れを感じるとき、それに対処することが心理的(本能的)に最優先される。

絆や仲間、社会よりも個人(不安や怖れへの対処)が優先される。買占めはその表れだ。そして、連帯から分断へ。

大学入学時、聞いた学長(だったかな)の話の一部が今も印象に残っている。

「経済は豊かさの手段だった。今は、目的になっている。」というものだ。私は、たいして勉強もできなかったが、福祉の専門大学(福祉学部福祉学科)で触れたものには今も感謝している。

パイの論理が通念のように語られている時期でもあり、時宣を得ていたと思う。なによりも、自分の周りだけでなく、「社会というもの」を知るきっかけになった。

タイタニック(1997 監督 ジェームズ・キャメロン)。賭けで勝って三等船室のチケットを手に入れた画家志望のジャック(レオナルド・ディカプリオ)と上流階級のアメリカ人、17歳のローズ(ケイト・ウィンスレット)の激しい恋も見ものだったが、私の印象に残ったのは、タイタニック号の乗客と労働者の構成だった。最下層で煤にまみれて石炭をくべ続ける労働者、一等船室に乗り込む上流階級の面々。ローズは、婚約者である大資産家のキャル(ビリー・ゼーン)から「碧洋のハート」を受け取る。キャルは…正確でなく申し訳ないが…「世が世なら我々は王侯貴族なのだ」と。最下層で石炭をくべ続ける(させられる・するしかない)労働者の背景がクローズアップするシーンだ。

ジェームズ・キャメロン監督は後に、それも狙いだと言っている。

マルクスは「資本論」の冒頭で「商品」の説明をしている。詳細は省く(説明しきれない)が、資本主義において、人は商品(労働力)である。階級闘争などという次元はとうに消え去り、階層別に見事に分断された労働者同士が争う。漁夫の利を得るのは当然、資本家(使用者サイド)。労働力商品として自らの価値を高めることが推奨される日々。とり残された低価値の労働力商品は、人としての尊厳も保ち得ない。それは人ではなく、商品たる所以だと考えると頭の中は整理される。

封建制度から近代、現代へと「進化」する社会の中で身分制度は大きく後退した。

それでも、キャルのセリフのように、“世が世なら王侯貴族である”というありようは未だ存在すると考えざるを得ない。王侯貴族が支配する社会では、奴婢や奴隷は所有物であり、人権や、尊厳などは認められなかった。

「モノプソニー」“monopsony”デービット・アトキンソン(元ゴールドマンサックス アナリスト)なるタイトルの記事に目が留まった。会社側が強くなりすぎ、労働者が安く買い叩かれることを言うらしい。企業が賃金に回す資金を内部留保へ向けていくと規模の小さな給料の上がらない会社が増えるという。企業を育成し、最低賃金を上げるべきだと提案する。なんだか、労働者に明るい提案のように聞こえるが、そうではない。

第一生命経済研究所 永濱利廣氏 三浦瑠麗氏等は、「労働者をクビにしやすい規制緩和が必要だ」と言う。スウェーデンのように、就労支援や職業訓練を充実させれば…と言うが、消費税が福祉目的税であるという詭弁と同じように、常に片手落ちであることは、日々関わらせていただいている方々と接する中で痛感する。

経済は手段なのか目的なのか。企業が繁栄した先に「私たち」の豊かさは待っているのだろうか。

遡って規制緩和の結果、非正規雇用者、派遣労働者の割合が増した。彼等が今、どのような状況に置かれているか。便利な調整弁としてのシングルマザー、女性労働者がどのような立場に置かれているか。さらに規制を緩和せよとは、どんな社会を目指しているのか。

世が世なら…私には、未だ封建制度の中で、軽視され、守られず、苦しんでいる人たちの姿が日々見える。ルサンチマンと言われようと、姿かたちを変えた王侯貴族のなりふり構わない姿が、このコロナ禍で見えてくる。

コロナは恐れるに足りない。インフルエンザよりも死者は少ない。事故死者よりもはるかに死亡者が少ない。経済的に追い詰められた自死のほうが心配。若者は重症化しないから、学校含め自粛は不要…経済を止める必要はない等々、声高に語る方々は、同時に「労働者を解雇しやすい規制緩和が必要」だという。

コロナウィルスによる重症化率は中高年が有意に高いという。

そう言えば、「老人に金をかけるのは、枯れ木に水をやるようなものだ」と言った大臣がいた。




 
 
 

Comments


© 2013 by Mental Navi Net. All rights reserved.

  • s-facebook
  • Twitter Metallic
bottom of page